どうも、まったり管理人です。
今回はセル画とデジタル画の違いについて解説します。最近のアニメしか知らない方にはあまり馴染みがないかもしれませんが、ドラゴンボールやサザエさんのような昔のアニメを観たことがある方なら「なんか最近のアニメと雰囲気が違うな」と感じたことがあるはずです。あの違いの正体がセル画です。
今のデジタルアニメと比較しながら、セル画がどういうものだったのか、なぜデジタルに移行したのか、そして今なぜセル画が見直されているのかをまとめていきます。
そもそもセル画とはどんなアニメ技法なのか
セル画とは、透明なシート素材「セル」にキャラクターを描いて、その下に背景画を置いてカメラで1コマずつ撮影する技法のことです。
この技法の最大のポイントは「透明なシートを使う」という点にあります。なぜ透明かというと、背景とキャラクターを分けて描くためです。もし1枚の紙に全部描いていたら、1コマ動かすたびに背景ごと全部描き直さなければなりません。それが透明なセルにキャラクターを描くことで、背景はそのままにキャラクターだけを差し替えられるようになります。これが当時の大発明でした。
名前の由来は「セルロイド」という素材です。ただし実際には発火の危険があるセルロイドは早い段階でアセテート素材に置き換えられていて、素材は変わっても「セル」という呼び名だけが残りました。
日本のセル画アニメの歴史

日本でのセル画の歴史は思ったより古く、1927年に大藤信郎の影絵アニメ「鯨」で一部セルが使用されたのが日本初とされています。ただ当時はまだ高価だったため普及は遅く、広く使われるようになったのは戦後のことです。
転機になったのは1963年の「鉄腕アトム」です。手塚治虫がテレビアニメの基礎を確立し、コスト削減のために動きを省略する「リミテッドアニメーション」の手法が発展しました。それ以降、セル画はアニメ制作の標準技法として約40年にわたって使われ続けます。
セル画の制作工程
セル画のアニメはざっくり言うと次のような流れで作られていました。
まず原画担当のアニメーターが動きのキーになる絵を描きます。次にその間を補完する動画を描き、それをトレスマシンでセルに転写します。転写できたら裏面からアニメカラーという専用塗料で色を塗り、最後に背景画の上にセルを重ねてカメラで1コマずつ撮影します。
ここで少し面白いのが「裏から色を塗る」という点です。表面から塗ると輪郭線が隠れてしまうため、あえて裏返して塗ることで表から見たときに線がきれいに残るようにしていました。この塗り方が後に「アニメ塗り」として定着し、今のデジタルイラストでも一つのスタイルとして受け継がれています。
また、アニメカラーは水性なので水洗いすればセルを再利用でき、コストを抑えるために使用済みのセルは洗って再利用されていました。限界は2〜3回ほどで、この過酷な「セル洗い」は主に新人が担当するのが通例だったそうです。
なぜデジタルアニメに移行したのか
日本では1997年から2002年の5年間に、セル画からデジタル彩色へと急速に移行しました。移行が進んだ理由は複数あります。
一番大きかったのはコストと効率の問題です。セル画は1枚ずつ手作業で塗るため膨大な時間と人件費がかかりました。修正もやり直しが難しく、ミスが即コストに直結していました。デジタルに移行すれば修正は何度でも簡単にでき、色数の制限もなくなります。
もう一つの大きな要因は素材の調達問題です。富士フイルムのセル画用アセテート樹脂の生産中止や、セル専用塗料(アニメカラー)の調達問題が重なり、移行が後押しされました。
さらにフィルム撮影ではテレシネ・フィルムスキャンという取り込み作業が画質を大きく下げる要因でしたが、デジタル化でこれが改善されました。
業界的な象徴として語られるのがサザエさんのデジタル移行です。日本動画協会によると、テレビで放送されているアニメでセル画を使って制作しているのはサザエさんが唯一とみられており、2013年10月6日放送分からデジタルに完全移行されました。これをもってテレビアニメからセル画が完全に姿を消したことになります。
セル画とデジタル画、それぞれの質感の違い
デジタルに移行して何が変わったのか、視覚的な違いをまとめると以下のようになります。
セル画には手で塗ることで生まれるわずかな筆ムラや色のにじみがあります。また透明なセルを重ねることで生まれる独特の透明感があり、光学フィルターによるぼかしやグロー効果もアナログならではの温かみを持っています。均一ではないその揺らぎが「セル画の温かみ」として今も語られる部分です。
一方デジタルは色が均一でクリア、何度でも修正でき、色数は無制限、エフェクトも自在に加えられます。ワンピースのような派手な覇気のエフェクトや、複雑なグラデーションはデジタルでこそ映える表現です。
どちらが良いというよりも、作品の雰囲気とどちらの質感が合うか、という話だと思います。
デジタルでわざとセル画を再現する「逆行の美学」
面白いのが、デジタルが当たり前になった今、逆に「いかにセル画っぽく見せるか」という技術開発が盛んになっている点です。
その代表格が「トゥーンレンダリング」あるいは「セルルック」と呼ばれる技法です。3DCGモデルをアニメ塗り風に見せるために色数を意図的に絞り、影の境界をぼかさずくっきりと段階的に表現します。MayaやBlenderなど主要なソフトに標準で搭載されていて、「チェンソーマン」などがこの手法を積極的に活用した作品として話題になりました。
また2024年放映の「負けヒロインが多すぎる!」ではEDに8mmフィルムカメラを使ったセルアニメが採用され、地上波では実に10年9か月ぶりに新作セルアニメが放送されました。本編はデジタルで作りながらEDだけあえてセルにするという逆張りのアプローチで、多くの視聴者が「懐かしい」と反応しました。
海外では「スパイダーマン:スパイダーバース」がデジタルでアナログ感を演出する手法を突き詰めた作品として有名です。わざとフレームレートを下げてカクつかせたり、コミック風のドットを乗せたりすることで「デジタルなのに手作り感がある」という独特の映像を作り上げました。
なぜこういった動きが起きているのかというと、デジタルの「均一すぎる完璧さ」への反動が大きいと思います。セル画のわずかな揺らぎやにじみは「人間が作ったもの」という感触を与えていて、デジタルが精密になればなるほどその感触が失われていく。だからクリエイターたちはわざわざ手間をかけてその質感を取り戻そうとしているわけです。
まとめ:セル画とデジタル画、どちらが好きですか?
個人的な感想を言うと、ドラゴンボールのような昔のアニメを見ると「やっぱりセル画の方がいいな」と思う瞬間があります。一方でワンピースのような、エフェクト全開のアニメを見るとデジタル画はすごくハマっていると感じます。
今30代の管理人はセル画からデジタル画に変わっていく時代のアニメを両方見てきているので、どちらにも良さがあるという感覚があります。ただ今の10代・20代の方は最初からデジタルが当たり前なわけで、セル画の「温かみ」ってどう感じるんだろう、というのは少し気になります。
3DCGについては正直まだ苦手意識が抜けなくて、2Dの中でどんどん技術が上がっていく方向が個人的には好みです。ただ「負けヒロインが多すぎる!」のような動きを見ると、セル画の質感はこれからも形を変えながら受け継がれていくんじゃないかと思います。
とまあ、セル画とデジタル画の違いはこんな感じで。アニメを観るときに「あ、この質感はセル画っぽいな」とか意識して観てみると、また違った楽しみ方ができると思います。では、また。


コメント